症例

頭部外傷(軽症・中等症頭部外傷)

頭部外傷とは?

頭のけがを総称して頭部外傷と言います。頭を強く打つと、見た目で分かる頭皮の傷を負うことのみならず、脳挫傷(脳に傷が入る)や頭蓋内出血(頭の骨の中に出血すること)を引き起こすことがあります。高齢者、特に抗血栓治療薬(血をサラサラにする薬)を飲まれている方は、軽微な外傷でも出血を来し、その後重篤な経過をたどる方がいるため注意が必要です。

 

頭部外傷の多くは軽症あるいは中等症例です。その多くは、脳の損傷や後遺症を起こすことなく治ります。しかし、軽症中等症頭部外傷は侮れず、中にはその後に新たに出血が出現・増大して死亡したり、重篤な後遺症を残したりすることがあります。

 

① 「Talk & deteriorate」とは ??

外傷直後は意識もはっきりしてお話しできていたのに、しばらくして意識が悪くなる患者さんがいます。外傷で生じた頭蓋内(頭の中)出血が徐々に増大することによって、このような経過をたどります。多くの患者さんが抗血栓治療薬と呼ばれる「血をサラサラにする」お薬を飲まれており、迅速な対応をしなければ重篤な後遺症を残したり、命を落とすことになります。

 

 

高齢者の20人に1人が抗凝固薬(ワーファリンや直接経口抗凝固薬)、10人に1人が抗血小板薬(アスピリンなど)を飲んでいます。これらの患者さんは、頭を打った後に「talk & deteriorate」を起こす可能性があり、適切な画像検査と診療が必要です。

抗血栓治療薬内服以外にも高エネルギー外傷や健忘症などの重篤化しやすい危険因子があり、これらの患者さんは早めの受診をお勧めします。

 

重篤化しやすい因子

・ 意識障害がある(普段と様子が違う)

・ 抗血栓治療薬を内服している(血液サラサラのお薬を飲んでいる)

・ 激しい頭痛、嘔吐が続いている

・ 受傷時に意識消失があった

・ 健忘症がある(外傷前後の記憶がなくなっている)

・ 脳神経の症状(物が二重に見えるなど)や四肢の運動障害・感覚障害がある

・ アルコール中毒あるいは薬物中毒がある

・ 高エネルギー外傷(注)

(注) 高エネルギー外傷とは、高所からの転落、自動車・バイク事故などを言います

 

下の写真は、70歳代の男性です。散歩中に転倒して後頭部を打撲され、救急車で当院に搬送されました。お名前も言えて、運動麻痺もありませんでしたが、頭の中に出血があり入院治療を行いました。交通事故受傷後1時間で来院されました。軽度の意識障害で、CTでは明らかな出血性病変は認めませんでした。しかし、入院から10日ほど経った後に出血が増大し、脳浮腫(脳の腫れ)もひどくなり手術を行いました。

 

 

外傷は、意識が保たれていても時に重篤な経過をたどります。頭を打って心配あればすぐに受診をしてください。

ページトップへ戻る