症例

慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫とは?

頭をぶつけて1ヶ月程して、徐々に頭の中に血が溜まってくることがあります。この病気を「慢性硬膜下血腫」と言います。「慢性」「硬膜下」「血腫」とは、慢性的に(徐々に)硬膜の下のスペースに血がたまる病気です。多くは1~2ヶ月前の頭部打撲などの外傷が原因となり、骨と脳の間にある3枚の膜のうち、硬膜とくも膜の間にひずみができ(正確には硬膜最下層に裂け目ができます)、その後、細かな血管がたくさん集まって来て、出血と止血を繰り返しながら徐々に大きくなります。

少量であるうちは、症状はありませんが、大きくなり脳を圧迫するようになると、頭痛、認知機能低下、運動麻痺、言語障害など様々な症状を呈するようになります。

 

 

血腫の増大には、組織プラスミノーゲン活性化因子、ブラジキニン、炎症因子、アクアポリンなど様々な蛋白が関与していると言われています。これらの蛋白が増えると血液が徐々に増大していきます。通常血管外に出た血液は凝血します(ゼリー状に固まる)。しかし慢性硬膜下血腫で溜まっている血腫は、血腫の周りに形成された膜(外膜・内膜)から産生された蛋白により溶かされて、多くはサラサラの液体状になっています。血腫が少量であるうちは、薬(主として漢方薬)で血腫が減少することがありますが、多量に溜まっている場合はその効果は期待できず、手術が必要となります。血腫は液体であるため、全身麻酔による開頭手術は必要とならず、頭蓋骨に1円玉程度の穴をあけて行う穿頭術で行います。

 

慢性硬膜下血腫の治療方法は?

頭の中に溜まっている血液の量が少なく、症状がない場合は内服薬で治療します。しかし、効果が証明されている投薬がなく、お薬を飲んでいても徐々に大きくなることがあります。溜まっている血液が多く、認知機能低下や歩行障害、言語障害、運動麻痺などが見られる場合、あるいは頭痛がある場合は手術を行います。

 

慢性硬膜下血腫の手術の方法は?

局所麻酔下に手術を行います。安全に手術を行うため、術中は鎮静薬、鎮痛薬も併用します。頭部を馬蹄上に固定し、病側の側頭頭頂部に約4cm 皮膚を切開します。頭蓋骨を露出し、1円玉程の大きさの穴をあけ、硬膜、血腫外膜を切開して血腫を吸引して取り除きます。血腫があったところをドレーン(管)で洗浄し、その管を血腫腔内に留置します。創部を閉じて手術を終了します。

 

 

頭を打った患者さんへ

頭を打ってしばらくして、頭痛、手や足の動かしづらさ、認知機能の低下などがあれば、すぐに受診をしてください。

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