症例

頭蓋内主幹動脈狭窄あるいは脳梗塞による外科治療

頭蓋内主幹動脈狭窄症または閉塞症とは?

 

頭蓋内(頭の中)の脳を栄養する太い動脈を頭蓋内主幹動脈と呼びます。この脳を栄養する太い動脈(内頚動脈や中大脳動脈)が突然閉塞すると、脳は広い範囲で血流不足となり、大きな脳梗塞を起こしてしまいます。しかし、動脈硬化が徐々に進行し、ゆっくりと脳を栄養する太い動脈が閉塞した場合は、側副血行路(別の血管から血液が回ってくる)により、脳梗塞を免れることがあります。

しかし、閉塞した血管領域の脳には十分に血流がまわっていないことが多く年間5~7%に脳梗塞が再発すると言われています。脳血流が足りなくなると、脳血管は血流量を増やそうと拡張し、流れが遅くなります。つまり脳血液の量は増え、血液が通過する時間は延長します。

CTによる脳血流検査で、これら脳の血流量、血液量、血液通過時間を測ることができます。これらに異常がある場合は近い将来脳梗塞を起こす可能性があり、また既に脳梗塞を起こしている場合は再発する可能性があります。

 

頭蓋内主幹動脈狭窄症または閉塞症の治療方法は?

 

抗血小板薬と言われる血液をサラサラにする薬で脳梗塞予防を行います。しかし先に述べたように、脳血流が既に低下しているような症例では脳梗塞発症リスクが高いため、外科治療を行います。血管が閉塞している場合は、血管内治療(カテーテルによる治療)は困難で、また閉塞していない場合でも頭蓋内血管の場合は、カテーテル治療は合併症が起こりやすく、脳卒中ガイドライン上も推奨されていません。

そこで、脳血流を増やすバイパス手術を行います。「浅側頭動脈」と呼ばれる側頭部の頭皮の血管を、「中大脳動脈」と呼ばれる脳表の血管に吻合します。この手術を行うことで、脳血流が増加し、今後起こりうる脳梗塞の発症を抑えることが期待できます。

 

頭蓋内動脈バイパス手術方法は?

頭皮に皮膚切開を行い、頭皮から浅側頭動脈を剥離、遊離します。その後、前頭側頭部に開頭(頭蓋骨を外す)を行い、脳を覆う硬膜を切開します。吻合する脳表の中大脳動脈を選定し、血管を端側吻合(動脈の先端と動脈の側面を縫ってつなげる)します。血管の吻合には10-0糸という非常に細い糸を用います。そのため、顕微鏡で丁寧に手術を行います。

 

病側の頭皮を切開し、浅側頭動脈を剥離します

 

開頭・硬膜切開し吻合する血管を選定します

 

血管を10-0糸で縫合します

 

血流を再開させます

 

下の写真のように、手術により血流が増え、脳梗塞の予防になります。

 

 

 

当院では、整容(見た目の綺麗さ)も考慮した手術を行っています。

髪の毛は、皮膚の切開部分1cm幅しか剃らないので退院時にもほとんど傷は目立ちません。

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