症例

脊椎圧迫骨折 (胸椎圧迫骨折あるいは腰椎圧迫骨折)

脊椎圧迫骨折とは

しりもちをつくなどの軽微な「外傷」や骨粗鬆症などによる「骨の衰弱」により起こる骨折で、くしゃみや腰をひねっただけで発症することがあります。垂直方向の圧力により、椎骨がつぶれるように変形する骨折を起こします(図1)。年間に約90万人に圧迫骨折が発生していると言われています。
骨折がおこると、強い腰痛が生じます。また、つぶれた骨の骨片が神経を圧迫すると、足にしびれや痛みを起こすことがあり、時に運動麻痺を起こすこともあります。
圧迫骨折の超急性期では、レントゲン撮影をしても診断が難しく、MRI検査が必要になります。
MRI T1強調画像で低信号、STIR画像で高信号を呈する椎骨は、超急性期の圧迫骨折を強く疑います。

脊椎圧迫骨折の治療方法とは?

圧迫骨折と診断あるいは圧迫骨折が強く疑われれば、鎮痛剤、外固定(コルセット装着)による保存的治療を行います。しかし、痛みが軽減されない場合は手術を行います。
圧迫骨折は高齢者に多く発症し、強い痛みのために動けない時間が長ければ長いほど、足腰の筋力が弱りその後の生活に支障が出てくることがあります。 足腰を弱らせないためにも、早く痛みをとる必要があるといえます。

 

脊椎圧迫骨折の手術方法は?

圧迫骨折の手術の目的は、折れてグラグラになった骨を安定化させることにあります。以前は、背中を大きく切り、折れた脊椎椎体の上下の脊椎骨を固定する手術が行われていました。しかし、この方法は、皮膚を大きく切って脊椎を露出する必要があり、脊椎を支える筋肉をはぎ取ることで、出血が多くなったり、背中側の脊椎支持が失われたりして、体への侵襲が大きく、高齢者には不向きな手術でした。

2011年から、侵襲少なく圧迫骨折の治療が出来るようになりました。経皮的椎体形成術と呼ばれる手術方法で、約5mmの皮膚の切開で骨折した椎骨にニードルを刺し、バルーンで広げたスペースにセメントを入れる手術です。骨折した椎骨が安定化し、痛みが軽減あるいは消失することが期待できます。
鎮痛剤や外固定で痛みが改善しない場合に適応になりますが、破裂骨折や後壁・椎弓根骨折がある患者さんでは合併症が生じやすく施行できません。

①「経皮的椎体形成術」

【治療内容】

経皮的椎体形成術は、骨折した椎骨をセメントで固めて痛みをとる手術です。全身麻酔が必要ですが、皮膚切開は左右に約5mmと小さく、筋肉のダメージもごく僅かです。透視(レントゲン撮影)を見ながら、専用のニードル(細い筒)を骨に差し込み、バルーンを膨らませて潰れた骨を形成して空洞を作り、この空洞にセメントをいれて安定化させます。手術は30~40分ほどで、出血はごく少量です。

背中の左右に5mmの皮膚切開をし、ニードルを椎体に刺入します

 

バルーンを膨らませて、セメントを入れるスペースを作ります

 

セメントを注入します。セメントが固まったら、ニードルを抜き、創部を閉じて終了です

 

【治療期間】

手術前日に入院し、手術後は入院したお部屋に戻ります。手術翌日から歩行開始し、手術後2日目に退院です。通常、入院期間は4日間です。
術前、痛みのため歩行ができない期間が長く、足腰の筋力が落ちている場合は歩行が安定するまで入院して歩行練習を行います。また、必要があればリハビリテーション病院に転院します。

 

【費用】

・ 入院治療にかかる費用は、「手術費」に加えて、「入院費」がかかります。
・ 約1週間の入院でかかる自己負担額は、3割負担で25万円前後、1割負担では約7万円です。
・ 高額療養費制度を利用することで、自己負担額は10万円前後になることが多いです。
・ 限度額適用認定証交付申請をすれば、限度額以上の支払いはありません。

詳しくは、ご自身が住んでいる市のホームページでご確認ください。

 

【リスク、合併症】

手術により以下の合併症を起こす可能性があります。

・出血:少量です。輸血を行うことはまずありません。
・感染:椎体や創部に感染を起こす可能性があります。
・神経根障害:ニードルで神経根を損傷する可能性があります。
・アレルギー:セメントなどに対するアレルギー反応を起こす可能性があります。より重篤なアナフィラキシーショックを起こす可能性があります。
・骨セメントの漏出:注入した骨セメントが骨折の隙間から漏れ出す可能性があり、神経周囲に漏れ出すと神経障害をきたす可能性があります。また、静脈に迷入する可能性もあり、その場合は肺塞栓を起こす可能性があります。
・上下の椎体骨の新たな骨折:骨セメントで固めた椎骨と骨粗鬆症で弱くなった椎骨との強度の差により、新たに周囲の椎骨に骨折をきたすことがあります。
・その他、予測し得ない合併症や既往疾患の悪化が起こることがあります。

 

②「後方固定術」

【治療内容】

胸腰椎圧迫骨折部の上下の椎弓を露出し、上下2椎体にスクリューを挿入して、圧迫骨折部を安定化します。手術は2~3時間要します。

 

【治療期間】

手術前日に入院し、入院翌日に手術を行います。手術当日はナースステーション隣にある重症患者病室で慎重に経過を観察します。翌日朝からしっかりとコルセット装着し、食事を開始します。入院時に入室した病室に戻り、徐々に歩行を開始します。歩行練習を行い、問題がなければ、術後2週間後に退院します。通常入院期間は16日間です。
術前、痛みのため歩行ができない期間が長く、足腰の筋力が落ちている場合は歩行が安定するまで入院して歩行練習を行います。また、必要があればリハビリテーション病院に転院します。

 

【費用】

・ 入院治療にかかる費用は、「手術費」に加えて、「入院費」がかかります。
・ 約1週間の入院でかかる自己負担額は、3割負担で80万円前後、1割負担では約10万円です。
・ 高額療養費制度を利用することで、自己負担額は10万円前後になることが多いです。
・ 限度額適用認定証交付申請をすれば、限度額以上の支払いはありません。

詳しくは、ご自身が住んでいる市のホームページでご確認ください。

 

【リスク、合併症】

手術により以下の合併症を起こす可能性があります。

・出血:骨折部周囲からの出血などで、出血量は多くなりやすいです。必要に応じて輸血を行います。
・感染:椎体や創部、挿入したスクリューなどに感染を起こす可能性があります。
・神経根障害:スクリューが神経根を損傷する可能性があります。
・スクリューやロッドの破損:手術からしばらくしてスクリューやロッドが折れてしまったり、抜けてしまったりする可能性があります。
・固定範囲外の新たな骨折:固定された椎骨と骨粗鬆症で弱くなった椎骨との強度の差により、新たに周囲の椎骨に骨折をきたすことがあります。
・その他、予測し得ない合併症や既往疾患の悪化が起こることがあります。

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