脳腫瘍
脳腫瘍とは?
頭蓋内(頭の中)に出来る腫瘍を脳腫瘍と言います。脳腫瘍は脳実質(脳の中)に発生するものだけでなく、脳実質の外側に発生する腫瘍もあります。
脳腫瘍は、様々な症状で発症します。運動麻痺を出したり、言語障害を出したり、腫瘍の場所や大きさにより、その症状は異なります。通常は神経症状が徐々に進んでいくのですが、急激に症状が進み、命関わる状態になったり、重い後遺症を残したりすることがあります。これには出血、てんかん発作、水頭症(頭に水が溜まる)などが関与し、緊急の処置が必要になる場合も多くあります。
徐々に増大する腫瘍では、言葉の障害(ろれつが回らない等)や運動麻痺がはっきりせず、認知症と誤診されることもあります。巨大な腫瘍では、早朝の頭痛や嘔吐を来すことがあります。
下の写真の症例は、認知症のような症状で発症しました。


- 治療が必要な髄膜腫の標準治療: 手術摘出。病理検査で放射治療の追加の有無を検討する
- 上記治療内容: 手術摘出。病理検査でatypical meningiomaと診断。放射線治療を追加
- 費用:約1週間の入院で自己負担額は、1割負担 約10万円(当院での治療は手術のみ、放射線治療費は別途必要)
- リスク・合併症:出血、感染、脳梗塞、神経障害、疼痛、その他
脳腫瘍の治療方法は?
脳腫瘍はたくさんの種類があり、それぞれに治療方針が異なります。良性腫瘍は手術で根治できる可能性がありますが、悪性腫瘍は手術だけで根治することは困難です。画像診断から腫瘍病理診断を予想し、悪性腫瘍あるいは治療が困難な症例は高次医療機関に紹介しています。
当院では、主として脳実質の外側にある腫瘍を治療しています。
脳腫瘍の手術方法は?
腫瘍の部位、大きさによって手術方法が異なります。
例えば、髄膜腫と呼ばれる脳腫瘍の中では最も多い腫瘍の手術では、腫瘍の発生母地、腫瘍の浸潤程度により手術方法が異なります。
腫瘍が、発生母地である硬膜ごと切り取ることが可能な場合は、硬膜ごと腫瘍を摘出します。

腫瘍が、発生母地である硬膜ごと切り取ることが出来ない場合は、硬膜から腫瘍を剥がして腫瘍を摘出し、腫瘍が付着していた硬膜は丹念に焼灼します。

腫瘍が、くも膜を超えて浸潤し、脳を栄養する動脈や神経に浸潤している場合は、腫瘍を可能な限り切り取り、血管や神経の周りに浸潤した腫瘍は一部残す。

他の脳腫瘍においても同様に、予想される腫瘍の病理(種類)、発生母地、浸潤程度によって手術の方法が異なります。
① 60歳台 一過性の右下肢脱力で発症した傍矢状洞髄膜腫

一次運動野にもぐりこんだ腫瘍で、幸いにして術後運動麻痺は出現せず、術後7日目に自宅退院しました。
このような「運動野」「言語野」「視覚野」など重要な脳の機能を果たす部位に発生した腫瘍では、手術により神経症状が増悪する可能性があります。
- 治療が必要な髄膜腫の標準治療: 手術摘出。病理検査で放射治療の追加の有無を検討する
- 上記治療内容: 手術摘出。1週間で自宅退院。追加治療なし。
- 費用:約1週間の入院で自己負担額は、3割負担 約58万円。
- リスク・合併症:出血、感染、脳梗塞、神経障害、疼痛、その他
② 60歳台 右顔面痛で発症した錐体テント髄膜腫

腫瘍は画像上は全摘出できましたが、術後に軽い複視が出現しました。腫瘍の頭側に滑車神経が張り付いて走行していました。これを丁寧に腫瘍から剥離しましたが、術後下方視で複視が出現し、滑車神経神経麻痺と診断し、内服で治療しました。幸いにして術後1か月後に複視はなくなりました。
このように「脳神経」近傍に発生した腫瘍では、手術により脳神経麻痺が新たに出現することがあります。一度出た脳神経麻痺は治らない可能性もあります。
- 治療が必要な髄膜腫の標準治療: 手術摘出。病理検査で放射治療の追加の有無を検討する。
- 上記治療内容: 手術摘出。1週間で自宅退院。追加治療なし。
- 費用:約1週間の入院で自己負担額は、3割負担 約58万円。
- リスク・合併症:出血、感染、脳梗塞、神経障害、疼痛、その他
脳腫瘍手術のその後は?
脳腫瘍は、全部とりきったと思っていても再発することがあります。腫瘍の再発は腫瘍の取り方よりも、腫瘍の「病理」が大きく影響します。良性腫瘍であっても増殖の速い腫瘍や悪性に近い性格を持つものもあり、これらは再発の可能性が高くなります。
病理検査の結果をみて、放射線治療を追加するかどうか判断します。放射線治療が必要な場合は、放射線治療が可能な病院を紹介します。
【治療期間】
手術前日に入院し、入院翌日に手術を行います。手術当日はナースステーション隣にある重症患者病室で慎重に経過を観察します。翌日朝から歩行、食事を開始し、入院時に入室した病室に戻ります。手術翌日あるいは翌々日に造影MRIを行い、しっかり腫瘍がとれているかどうか、脳梗塞など合併症を起こしていないかどうか確認します。問題がなければ、術後1週間後に退院します。通常入院期間は9日間です。
退院後も、「脳腫瘍が再発していないかどうか」、「別の場所に腫瘍ができていないか」確認する必要があり、定期的に外来で画像検査を行います(年に1~2回程度)。
【費用】
・ 入院治療にかかる費用は、「手術費」に加えて、「入院費」がかかります。
・ 約1週間の入院でかかる自己負担額は、3割負担で58万円前後、1割負担では約10万円です。
・ 高額療養費制度を利用することで、自己負担額は10万円前後になることが多いです。
・ 限度額適用認定証交付申請をすれば、限度額以上の支払いはありません。
詳しくは、ご自身が住んでいる市のホームページでご確認ください。
【リスク、合併症】
手術により以下の合併症を起こす可能性があります。
・出血:皮膚、皮下、硬膜外、硬膜内、脳内に出血を来すことがあります。腫瘍を栄養する血管・血流が多い場合や静脈洞近傍に発生した場合、多量の出血をきたす可能性があります。
・感染:頭蓋内、頭蓋骨、皮下などに感染が起こることがあります。
・脳梗塞:脳を栄養する血管が腫瘍の近く、または腫瘍の中を走行している場合、この血管を損傷する可能性があり、支配領域の脳梗塞をきたすことがあります。
・新たな神経症状の出現:腫瘍が運動野、感覚野、視覚野などの脳の重要な部位の近傍に発生した場合、術後に運動麻痺、感覚障害、視野障害などの神経症状が出現する場合があります。
・脳神経障害:腫瘍の近傍に脳神経が走行している場合、術後に脳神経麻痺をきたす可能性があります。
・手術部の痛み、腫れ:術後に創部の痛みや腫れが起こりますが、多くは一時的です。
・その他、予期せぬ合併症が起こる場合があります。




